こんにちは、獣医師の林です。
暑さが少しずつ落ち着き、過ごしやすくなってくる秋。
夏の間は、
「暑くなってから食欲が落ちていた」
「いつものごはんを残すことが増えていた」
というワンちゃんも、涼しくなってくると少しずつ食欲が戻ってくることがあります。
すると今度は、
「最近すごくよく食べる」
「食べ終わっても、もっと欲しがる」
「夏よりごはんを増やした方がいい?」
「欲しがるだけ食べさせても大丈夫?」
と、ごはんの量に迷う飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
秋は「食欲の秋」といわれますが、食欲があることと、体に必要な量が増えていることは必ずしも同じではありません。
特に小型犬の場合、私たちから見るとわずかな体重増加でも、もともとの体重に対する割合で考えると大きな変化になります。
例えば、3kgのワンちゃんが300g増えて3.3kgになった場合、増えたのはたった300gに見えますが、もとの体重から考えると10%の増加です。
だからこそ、秋は「よく食べるから」という理由だけでごはんを増やすのではなく、現在の体重や体型、運動量などを一緒に確認することが大切です。
今回は、小型犬の秋の食欲変化と「秋太り」を防ぐためのごはん量の考え方についてご紹介します。

【🍂秋になると食欲が増えるのはどうして?】
夏の暑い時期には、気温や湿度の高さによって活動量が減ったり、暑さによるストレスなどから食欲が低下したりするワンちゃんもいます。
お散歩の時間が短くなったり、日中は涼しい室内で寝て過ごす時間が長くなったりする子も多いのではないでしょうか。
秋になり気温が下がって過ごしやすくなると、こうした夏の食欲低下が改善し、普段の食欲に戻ることがあります。
また、涼しくなってお散歩の時間が増えたり、外で活発に遊ぶようになったりすれば、活動量の増加に伴って必要なエネルギー量が変化することもあります。
つまり、「秋になってよく食べるようになった」という変化だけで、食べすぎなのかどうかを判断することはできません。
大切なのは、
- 夏と比べて体重は変わっているか
- 体型に変化はないか
- お散歩や遊びの時間は増えたか
- 夏に減らしていたごはん量を戻したのか
- おやつやトッピングが増えていないか
などを一緒に確認することです。
【🔍「食欲が戻った」と「食べすぎ」はどう見分ける?】
食欲があること自体は、元気のひとつの目安でもあります。
しかし、「欲しがる=体が必要としている」とは限りません。
ワンちゃんによっては、必要なエネルギーを十分摂っていても、ごはんやおやつを見ると喜んで食べることがあります。
飼い主さんがキッチンへ行くたびについてきたり、ごはんの後もお皿をなめ続けたり、食卓のそばで待っていたりすると、
「まだお腹が空いているのかな?」
と思ってしまいますよね。
でも、ごはんを欲しがる様子だけでは、適切な食事量かどうかは判断できません。
ここで確認してほしいのは、「体重」と「体型」です。
食欲が増えていても体重や体型が安定し、活動量も増えているのであれば、現在の食事量がその子に合っている可能性があります。
一方で、
「毎月少しずつ体重が増えている」
「以前よりウエストのくびれが分かりにくい」
「肋骨が触りにくくなってきた」
といった変化があれば、食事やおやつから摂っているエネルギーが、使っているエネルギーを上回っている可能性があります。

【🐶体重だけではなく「体型」も確認してみましょう】
愛犬の適正体重を考える時には、体重計の数字だけで判断しないことも大切です。
同じ犬種、同じ性別、同じ年齢であっても、骨格や筋肉量には個体差があります。
そのため、
「この犬種なら○kgが理想」
と一律に決めることはできません。
そこで動物病院などで体型を評価する際に使われているのが「BCS(ボディ・コンディション・スコア)」です。
BCSでは、肋骨の触れ方や腰のくびれ、お腹のライン、脂肪のつき方などから、その子の体型を評価します。
ご家庭でも、次の3つを確認してみましょう。
1.肋骨を触ってみる
愛犬の胸の横に手を当て、やさしく肋骨を触ってみてください。
理想的な体型では、皮膚の上から軽く触れると肋骨を確認することができます。
強く押さなければ肋骨が分からない場合には、脂肪が多くついている可能性があります。
反対に、肋骨が目立って見えたり、ほとんど脂肪を感じず簡単に骨が分かる場合には、痩せすぎていないか確認が必要です。
2.上から見てみる
愛犬が立っている状態で、背中側から体を見てみましょう。
肋骨の後ろから腰にかけて、適度なくびれが確認できるのがひとつの目安です。
以前はくびれがあったのに、最近は胴体がまっすぐに見えるようになった場合には、体重だけでなく体脂肪が増えていないか確認してみましょう。
3.横から見てみる
横から見た時には、胸からお腹に向かって、お腹のラインが適度に持ち上がっているかを確認します。
お腹が下へ垂れ、胸からお腹までほぼ水平に見える場合には、脂肪が増えている可能性があります。
ただし、犬種や体格、被毛の量によって見え方は異なります。
特に毛量の多いワンちゃんは見た目だけでは判断しにくいため、実際に体へ触れて確認してあげましょう。
【⚖️小型犬の「少し増えただけ」には注意】
小型犬では、100g、200gという体重変化を「これくらいなら大丈夫」と感じてしまうことがあります。
しかし、先ほどの3kgのワンちゃんのように、300gの増加は体重の10%に相当します。
5kgのワンちゃんでも500g増えれば10%です。
特に、
- 避妊、去勢後
- シニア期
- お散歩時間が短くなった
- 関節などの問題で運動量が落ちた
- 夏から室内で過ごす時間が増えた
といったワンちゃんでは、以前と同じごはん量を与えていても体重が増えてくることがあります。
「ごはんの量を変えていないから大丈夫」ではなく、体重や体型が変わっていないかを定期的に確認してみましょう。
【🍚フードに書いてある給与量は「絶対」ではありません】
ペットフードのパッケージには、体重ごとの給与量が記載されています。
例えば、
「体重3kgなら1日○g」
と書かれていることがあります。
これはごはん量を考えるうえで大切な目安ですが、すべての3kgのワンちゃんに同じ量が必要というわけではありません。
必要なエネルギー量は、
- 年齢
- 避妊、去勢の有無
- 活動量
- 筋肉量
- 生活環境
- 現在の体型
- 健康状態
などによって変わります。
同じ3kgのワンちゃんでも、毎日たくさんお散歩をする若い子と、室内でゆっくり過ごすことが多いシニア犬では、必要なエネルギー量が異なることがあります。
そのため、パッケージに記載されている量をスタート地点のひとつとして考え、
「この量で体重と体型が維持できているかな?」
と定期的に確認しながら、その子に合った量へ調整していくことが大切です。

【🍪小型犬では「クッキー1枚」も意外と大きい?】
意外と見落としやすいのが、ごはん以外から摂っているエネルギーです。
例えば、
- トレーニング用のおやつ
- 歯磨きガム
- お散歩後のごほうび
- 家族がそれぞれ与えているおやつ
- フードに加えているお肉や魚
- チーズなどのトッピング
これらもすべて、1日の摂取エネルギーに含まれます。
特に小型犬では、「クッキー1枚くらい」と思っているものが、意外と大きな割合を占めていることがあります。
例えば、3kgの成犬が1日に必要とするエネルギー量を約200kcalと仮定してみましょう。
ここで10kcalの犬用クッキーを1枚食べると、それだけで1日に必要なエネルギー量の約5%になります。
これを、1日に約2,000kcal必要な人に置き換えて考えると、
クッキー1枚で約100kcalのおやつを食べるのと同じくらいの割合
になります。
「たった1枚」と思っていても、小さな体のワンちゃんにとっては、決して小さくないことが分かりますよね。
さらに、
「朝、お父さんから1枚」
「お散歩の後にお母さんから1枚」
「夜、家族が食事をしている時にもう1枚」
となれば、10kcalのクッキーを3枚食べただけで30kcal。
先ほどの3kgのワンちゃんの場合には、1日の必要エネルギー量の約15%に相当する計算になります。
もちろん、実際に必要なエネルギー量は年齢や活動量、避妊・去勢の有無などによって異なりますし、クッキーのカロリーも商品によって違います。
大切なのは、
「犬にとっての一口」と「人にとっての一口」は、同じ感覚ではない
ということです。
「フードは決められた量しか与えていないのに太ってきた」という場合には、一度おやつやトッピングを含め、愛犬が1日に口にしているものをすべて書き出してみましょう。
【🍬おやつはどのくらいまで?】
一般的に、おやつなど主食以外から摂るエネルギーは、1日に必要な総エネルギー量の10%以内に抑えることがひとつの目安とされています。
ただし、「10%までなら必ず与えてよい」という意味ではありません。
体重管理が必要な子や、療法食を食べている子、持病がある子などでは、おやつの種類や量について個別に考える必要があります。
また、トッピングをたくさん追加する場合には、その分フード量を調整する必要が出てくることもあります。
総合栄養食を主食としている場合、トッピングの量が多くなりすぎると、単にカロリーが増えるだけでなく、食事全体の栄養バランスにも影響する可能性があります。
おやつを与える習慣がある場合には、最初から1日分を取り分けておくのもおすすめです。
家族みんながそこから与えるようにすると、「誰がどのくらいあげたのか分からない」ということを防ぎやすくなります。
【📊ごはんは「グラム」だけではなくカロリーも確認】
同じ「50g」のフードでも、含まれているエネルギー量は商品によって異なります。
そのため、フードを変更する際に、
「今まで50gだったから、新しいフードも50g」
としてしまうと、実際に摂取するエネルギー量が大きく変わることがあります。
フードを切り替える際には、パッケージに記載されている「代謝エネルギー(ME)」や「○kcal/100g」などの表示も確認してみましょう。
特にドライフードからウェットフードへ変更した時や、複数のフードを組み合わせる時、トッピングを追加する時には、「何g食べているか」だけではなく「全部でどのくらいのエネルギーを摂っているか」という視点も大切です。

【🐕運動量が変わったら、ごはん量も見直してみましょう】
秋は暑さが落ち着き、お散歩や外遊びを楽しみやすい季節です。
夏は10~15分程度だったお散歩が30分になったり、休日にドッグランやお出かけをする機会が増えたりすることもあります。
活動量が増えれば、消費するエネルギー量も増える可能性があります。
一方で、涼しくなったからといって、必ずごはんを増やさなければならないわけではありません。
まずは現在の量を基本に、
- 体重が減っていないか
- BCSが変化していないか
- 筋肉が落ちていないか
- 活動量はどのくらい増えたか
などを確認してみましょう。
反対に、秋になって食欲だけが増えているものの、運動量は夏とほとんど変わらない場合には、欲しがるたびに食事を増やしてしまうと体重増加につながります。
「季節が変わったから増減する」のではなく、「その子の体がどう変化しているか」を見ながら調整することがポイントです。
【⚖️ごはん量を見直す時は、少しずつ】
体重が増えてきたからといって、急にごはんを大幅に減らすことはおすすめできません。
まずは、
- おやつが増えていないか
- 家族が知らないところで与えていないか
- トッピングの量が多くなっていないか
- フードを目分量で与えていないか
を確認してみましょう。
フードはできるだけキッチンスケールなどで計量すると、毎日の量を把握しやすくなります。
「いつものカップ1杯」でも、フードの粒の大きさやすくい方によって量が変わることがあります。
また、体重を減らす必要がある場合には、現在の体型や健康状態によって適切な減量ペースも異なります。
大幅に食事を制限するのではなく、かかりつけの先生と相談しながら安全に進めていきましょう。
【🏥「食欲の秋」では済ませない方がよい変化】
秋になって食欲が増えることはありますが、急激な食欲の変化が病気のサインとして現れることもあります。
特に、
- 急に異常なほど食べ物を欲しがるようになった
- ごはんを食べてもすぐに激しく欲しがる
- 食欲が増えているのに体重が減っている
- 以前より水をたくさん飲む
- 尿の量や回数が増えた
- お腹が張ってきた
- 下痢や嘔吐が続いている
- 便の量や状態が大きく変わった
- 落ち着きがなくなった
- 薬を飲み始めてから急に食欲が増えた
などの変化がある場合には、「食欲の秋だから」と様子を見続けず、一度動物病院へ相談しましょう。
例えば、糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などでは食欲が増加することがあります。
また、ステロイドなど一部のお薬でも食欲が強くなることがあります。
特に「たくさん食べているのに痩せていく」という変化は、単純な季節性の食欲増加とは考えず、早めに相談することをおすすめします。
【📝月に一度は「体重+体型」をチェックしてみましょう】
ごはん量がその子に合っているかどうかを確認するためには、定期的な記録がおすすめです。
例えば月に一度、
- 体重
- 肋骨の触れ方
- 上から見たウエストのくびれ
- 横から見たお腹のライン
- 1日のフード量
- おやつやトッピング
- お散歩時間
- 最近の食欲
などを確認してみましょう。
体型は写真に残しておくのもおすすめです。
上からと横から、できるだけ同じ場所、同じ姿勢で撮影しておくと、数か月後に比較した時に変化へ気づきやすくなります。
小型犬では数百gの変化でも体重全体に占める割合が大きいため、「見た目はそんなに変わっていないから」と判断せず、実際に測定してみることが大切です。

【まとめ】
「食欲の秋」という言葉があるように、涼しくなると夏に落ちていた食欲が戻り、ごはんをおいしそうに食べてくれるワンちゃんも増えてきます。
夏に食べてくれず心配していた飼い主さんにとっては、元気に食べてくれる姿はとてもうれしいものですよね。
ただし、
「欲しがる=必要な量」とは限りません。
愛犬にとって適切なごはん量を考える時には、
「何g食べているか」
だけではなく、
「体重は維持できている?」
「肋骨は適度に触れる?」
「ウエストのくびれはある?」
「最近の運動量は?」
「おやつやトッピングはどのくらい?」
「体重や体型は以前と比べてどう変わった?」
と、その子の体と生活を一緒に見ることが大切です。
そして、小型犬では私たちにとって「ほんの一口」に見えるおやつも、1日に必要なエネルギー量から考えると意外と大きな割合になることがあります。
ペットフードに記載されている給与量も、愛犬のごはん量を考えるための大切な「目安」です。
その数字だけをずっと守り続けるのではなく、年齢や活動量、体型、健康状態などに合わせて見直していきましょう。
「最近ちょっと丸くなったかな?」
「前より肋骨が触りにくいかも」
「おやつが増えているかも」
そんな小さな気づきが、ごはん量を見直すよいタイミングになります。
今年の秋は「どのくらい食べたか」だけでなく、ぜひ愛犬の体にも触れてみてくださいね。
毎日のごはんを、その子の「今の体」に合わせて考えていくことが、健康な体型を長く維持することにつながります。
